Candy Rackをインストールしたマーチャントから、よく2つの質問をいただきます。「アップセルでどのくらいの成果が期待できるのか」と「どんなアップセル戦略がよいのか」です。後者については、すでにおすすめのアップセル戦略ガイドを公開しています。

成果については、社内では何をもって「良い」とするかの感覚はありました。ただ、それを裏付けるデータをマーチャントに提示できていませんでした。ここ数か月のAIの進歩を活用し、データを分析することで、「アップセルの購入率2%は良い数字か」「AIのおすすめは手動で選んだ商品より効果的か」「アップセルはストア全体の売上をどのくらい増やすのか」といった疑問に答えるための知見をまとめることができました。
主なポイント
- アップセル購入率の中央値は2.4%です。このコンバージョン率は、アップセル商品の販売数を表示回数で割って計算します。上位10%に入る水準は約10%です。時間をかけて非常に適切なオファーを作れば、購入率が10%を超える可能性もあります。
- 割引の影響はそれほど大きくなく、商品の関連性のほうが重要です。割引なしのオファーは、1〜20%割引のオファーと同程度の購入率でした。理由もなく利益率を下げる必要はありません。
- AIによる商品提案は購入率が高く(3.2%)、手動で選んだオファー(1.9%)を上回りました。Shopify、Gemini、Candy Rack AIを試し、どのエンジンが自分のストアに合うかを確かめることをおすすめします。
- 提案する商品数を増やすと購入率も上がります。商品が1点のオファーは1.5%、3点以上では3.1%でした。おすすめは1つのオファーにつき3〜4点です。

データの分析方法
Candy Rackのダッシュボードで使用しているものと同じオファー分析データを使い、2026年1月1日から8月31日までに表示されたオファーを調べました。Candy Rackは5,000以上のShopifyストアにインストールされており、そのうち3,199ストアが期間中に少なくとも1件のオファーを表示しました。合計で39,007件のオファー、2億1,860万回の表示(うち5,650万回が商品ページのポップアップ)、191万点のアップセル販売がありました。オファー単位の分析表には、表示回数が1,000回以上の8,854件のみを含めています。数値はすべてストア間の中央値で、特定の大規模ストアが結果を左右しないようにしています。

このデータには、ストア、オファー、商品ごとの表示回数、カート追加数、販売数が記録されています。個々の購入者に関する情報や個人情報は含まれません。結果は集計した形で掲載し、個別のストアは特定できないようにしています。
1. 表示場所別の購入率
Candy Rackは、商品ページから購入後までの購買プロセス全体に対応する、Shopifyでは数少ないアップセルアプリの1つです。マーチャントは合計7か所にオファーを表示できます。

表示場所によって購入率が異なるのは、顧客が購買プロセスの異なる段階にいるためです。全体として、早い段階で表示されるほど購入率は高くなる傾向があります。そのため、商品ページやスライド式カートなど、購入前のアップセルを優先することをおすすめします。
| 表示場所 | ストア数 | 購入率の中央値 | 第25〜第75百分位 | カート追加率 | 販売数 ÷ カート追加数 |
|---|---|---|---|---|---|
| 商品ページのポップアップ | 1,311 | 2.4% | 1.0 – 5.2% | 11.7% | 23% |
| カートのポップアップ | 387 | 1.9% | 0.7 – 4.0% | 4.9% | 41% |
| スライド式カート内のオファー | 220 | 1.4% | 0.6 – 2.7% | 5.2% | 26% |
| サンクスページ | 194 | 0.7% | 0.3 – 1.5% | 1.2% | 59% |
| チェックアウト(Shopify Plus)* | 168 | 0.4% | 0.1 – 0.8% | 1.0% | 38% |
| 購入後ページ(ワンクリック) | 190 | 0.3% | 0.1 – 0.7% | 該当なし | 100% |
| 商品ページの埋め込みブロック** | 625 | 0.1% | 0.0 – 0.3% | 0.7% | 17% |
* チェックアウトのアップセルオファーは、Shopifyのチェックアウト内に表示されます。Shopify Plusプランが必要です(Checkout Extensibility)。
** チェックボックス型とボタン型の埋め込みブロックを合算しています。商品ページが読み込まれるたびに表示を1回と数えるため、ほかの表示場所と購入率を直接比較することはできません。
一方、購入後のオファーは購入率が低めでも、そこで得られる売上は純粋な追加売上です。活用しないのはもったいないと思います。

2. 割引
以前は、アップセル購入率を高めるために10〜15%程度の小さな割引をおすすめしていました。しかし、今回の分析ではその効果を裏付けるデータが得られなかったため、推奨内容を見直す必要があります。

購入率にとってより重要なのは、商品の関連性です。購入する商品に合った補完的な提案であれば、割引の有無は顧客にとってそれほど重要ではないようです。この点は大切です。10〜20%を値引きせずに済めば、利益率に大きな違いが出ます。
| アップセル商品の割引 | ストア数 | 購入率の中央値 |
|---|---|---|
| 割引なし | 779 | 2.3% |
| 1〜20%割引 | 220 | 2.0% |
| 21〜50%割引 | 68 | 1.5% |
| 定額割引 | 61 | 1.3% |
条件をそろえて比較するため、割引の分析では表示回数1,000回以上の商品ページのポップアップだけを対象にしました。
割引が引き続き有効なケース
上記は単品のクロスセルに限ったデータで、バンドルは含まれていません。数量に応じて割引するまとめ買いバンドルや、異なるSKUを組み合わせた商品セットでは、引き続き割引をおすすめします。

バンドルは通常、最初に選んだ商品よりかなり高額になります。そのため、顧客には追加の購入動機が必要で、多くの場合それが割引によるお得感です。
マーチャントにとっては、平均注文額(AOV)と利益額が増えることが、割引を行う理由になります。具体的な割引額は、商品の利益率に応じて決める必要があります。
3. AIによる提案と手動の商品選定
アップセル戦略では、AIに商品を提案させるか、自分で選ぶかもよく聞かれる質問です。良いニュースは、AIによる商品提案は設定が大幅に速いだけでなく、成果も優れているということです。

ただし、AIが最も強いのは商品ページです。顧客が特定の商品を追加する場面なので、その商品がAIモデルにとって明確な判断の基準になります。購買プロセスが進むと、AIによる提案の成果は下がります。おそらくカート全体が判断の基準となり、顧客の具体的なニーズを読み取りにくくなるためです。
| 表示場所 | 手動選定 | AI |
|---|---|---|
| 商品ページのポップアップ | 1.9% (753 ストア) | 3.2% (355) |
| スライド式カート内のオファー | 1.2% (81) | 1.4% (82) |
| カートのポップアップ | 1.9% (201) | 1.2% (78) |
| サンクスページ | 1.1% (69) | 0.5% (74) |
| チェックアウト(Shopify Plus) | 0.4% (108) | 0.3% (62) |
| 購入後ページ | 0.3% (79) | 0.1% (59) |
Candy RackのAIによる商品提案には、Shopify Product Recommendations API(標準)、Gemini、Candy Rack AIの3つの選択肢があります。後者2つを公開したのは2026年7月なので、今回のデータは主にShopifyの提案に基づいています。今後はモデルごとに分けて分析し、どれが最も良い成果を出すかを確認したいと考えています。
各エンジンの仕組みや違いについては、下の動画、またはこちらの記事をご覧ください。
AIと手動選定を組み合わせる
Candy Rackでは、表示場所ごとにAIと手動選定を使い分けるだけでなく、両方を組み合わせることもできます。たとえば、最初の1点は手動で選び、残りはAIに任せるといった設定が可能です。

私は通常、まず全商品でAIによる提案を有効にすることをおすすめしています。約30秒で設定でき、すぐに追加売上につなげられるからです。その後、売れ筋商品向けに、より細かく調整した手動の提案を作っていきます。
4. 1つのオファーで提案する商品数
もう1つ重要なのは、1つのオファーに含める商品数です。つまり、それぞれの表示場所で顧客に何点のアップセル商品やクロスセル商品を見せるかということです。

商品数が増えると選択肢も増えるため、購入率が高くなるのは自然です。ただ、私は選択肢の多すぎによる負担を避けるために上限を設けています。選べなくなった顧客が購入そのものをやめ、ストア全体のコンバージョン率が下がる可能性があるためです。Nick Kolendaと同じく、1つのオファーにつき3〜4点をおすすめします。
| オファー内の商品数 | 手動選定 | AI |
|---|---|---|
| 1 | 1.5% (526 ストア) | 1.4% (39) |
| 2 | 2.1% (134) | 2.2% (61) |
| 3 | 2.9% (112) | 3.2% (158) |
| 4〜5 | 3.1% (138) | 3.6% (77) |
| 6〜10 | 3.1% (100) | 5.0% (34) |
今回のデータでは、4〜5点、6〜10点でも購入率は上がり続けています。ただし、サンプル数は比較的少なく、ストア全体のコンバージョン率への影響も測定していません。

この数値をどう活用するか
どのアップセルアプリを使っていても、今回の指標を自分のデータと比較してみてください。気になる点があれば、改善を試してみましょう。LinkedInで私に直接ご連絡いただいても構いません。アップセル戦略を拝見し、個別にアドバイスします。

確認しておきたいポイントをまとめました。
- 表示場所ごとの購入率を比較する。上記の表と比べて中央値を下回るオファーは、提案する商品や説明文を変更してみましょう。
- 割引を無効にする。購入率への影響を確認してください。Candy Rackなら、Intelligemsで本格的なA/Bテストを実施できます。
- AIによる商品提案を有効にする。商品ページやスライド式カートで、すべての商品を対象に設定しましょう。
- すべてのオファーに少なくとも3点の商品が含まれているか確認しましょう。
このレポートは定期的に更新する予定です。特に、2026年9月に公開したまとめ買いバンドルのオファーについても取り上げたいと考えています。







